023横浜赤レンガ倉庫


BONTブログに初投稿です。

2025年10月下旬、所用のため、横浜を訪れたので、歴史的建築物の利活用で成功をおさめている「横浜赤レンガ倉庫」を見てきました。

あいにくの雨模様でしたが、偶然なのか、計画的なのか、それとも参加するためなのかは、さておき、翌日に横浜マラソンが開催されるとのことで、コース整備の準備が着々と進められていて、とってもいい雰囲気です。

この「横浜赤レンガ倉庫」はマラソンコースのクライマックスとも言える41km付近に位置しています。ランナーにとっては、ゴール直前の疲れた身体に最後の元気を与えてくれます。実は、横浜マラソンにおいても、とっても大切な役割を果たしているんです。

それでは、そろそろ建物の話を進めましょう。

この建物は、明治末期から大正初期に国の模範倉庫として建設されたレンガ造りの歴史的建造物です。1号館と2号館の2棟あるのですが、今回は商業施設として生まれ変わった2号館について、考察していきます。

こちらの2号館は1907年(明治40年)に着工、1911年(明治44年)に竣工、設計者は大蔵省臨時建築部を率いていた妻木頼黄 (つまき よりなか) だそうです。何故だか理由はわかりませんが、着工も竣工も1号館よりも早いのに、2号館とのことです。配置などの関係でしょうかね。

このブログ集の中で、横浜市は建築計画概要書のWEB閲覧を開始している旨を紹介していたのを、ふと思い出したので、早速ですが、概要書をチェック!


(便利な時代になりました。これからどんどん普及していくでしょうね。)

むむ、いきなり気になるところを発見!

敷地が建築基準法上の道路に接していないみたいで、43条ただし書き許可を取得されています。現地を見る限りは、敷地は道路に接しているように感じたので、後から道路整備等で接することになったのか、はたまた、目に見えないカミソリ敷地が間に存在しているのか、、、、、。謎は深まりますが、検査済証もあり、建築基準法に適合していますので、安心できる建物なのは間違いなし。

むむむ、次に気になったのは、約226㎡の増築部分!

既存レンガ倉庫の南側にある鉄骨造平屋建ての部分が該当すると思われますが、ぱっと見は、耐火建築物になっていないような気がします。

この横浜レンガ倉庫2号館は、規模や用途から耐火建築物にする必要があると思います。レンガ造のところの主要構造部は、耐火構造と思われるので問題ないですが、確認申請上は1棟増築となっており、増築部分も主要構造部に耐火構造が求められると思います。鉄骨の柱や外壁がどのように適合されているのでしょうか。もしかしたら、外壁ではなくすべて開口部扱いかも知れないし、鉄骨にも何らかの被覆がされているのかも知れないです。平成13年の確認申請なので、耐火別棟や火熱遮断壁などの規定はまだ存在しません。概要書では、そこまで分からないので残念ですが、告示や大臣認定などを駆使して、うまく適合させているんでしょうね。

こうなってくると、どんどん気になってくるのは建基法マニアの宿命です。

あと、防火の観点で気になるところは、区画関係ですよね。竪穴区画と面積区画がどのように適合されているのでしょうか。

ワンフロアは、縦22m×横150m=3,300㎡のため、面積区画が必要ですが、なんと、もともと倉庫という用途のため、内部は約500㎡ごとにレンガ造の壁とカッコいい鉄の扉で区画されており、現行法でも告示で適合するような仕様だと思われます。明治期の建物なのにすごいです!

竪穴区画については、建物を活用するにあたり階段とエレベーターが新設されており、増築時の整備において竪穴区画を形成したのでしょう。認定ガラスにより、かっこよくできています!

あーーー、止まらなくなってきました。

ここまで来たら、構造補強についても考察したいところ。

概要書ではわからないので、横浜市のHPを調べてみると、構造補強工事を説明しているページを発見!

補強のコンセプトは、「外観意匠を保存すること、室内の煉瓦壁面が見えるようにすること、将来必要に応じて撤去できることといった基本方針から、鉄骨による補強方法がとられています。」とのことです。

内容としては、

<主体構造の補強>

  • 側壁揚重機室の安定化(鉄骨バットレスの設置)
  • 東西両妻面の鉄骨バットレスによる補強
  • 階段室の耐震コア化(鉄骨門型架構・鋼板耐震パネル)
  • 境界壁の鉄骨バットレスによる面外曲げ補強

後から調べて分かったことなので、内部の鉄骨が補強のためのものかは分からないですが、当時のデザインを踏襲して作られており、レンガの意匠とマッチしていて、すごく素敵な印象でした。

普段なにげに使っている建物でも、こうやって視点を変えて見てみると面白い。

古い建物を安心して使うためには、色んな工夫がされているんですね~。

赤レンガ倉庫は、全国にまだまだあるので、活用方法の違いも含め、他のところも行ってみたいなって思いつつ、マラソンコースの重要な役割を果たしている建物を見に行くのも捨てがたいかなぁー

今回の横浜赤レンガ倉庫は立地も良く、横浜みなとみらいからも徒歩圏内で、バルコニーから望む景色は、これぞ横浜って感じなのでおススメです。(T.A)